銀色に光る大きな鮭が水揚げされると、魚市場周辺の海にはたくさんのカモメが飛びまわり、魚市場の人々は鮮度が落ちないよう駆け足で作業場へ急ぐ。
活きのいい秋鮭が水揚げされると市場が活気づきます
宮城県・南三陸町に位置する志津川漁港は、朝7時から活きのいい魚や貝などが次々と『セリ』にかけられます。セリとは魚のオークションのようなもの。指で金額のサインを示す所もあるけど、ここでは希望の値段を大声で言い合い、一番高い値をつけた仲買人が買いつけ、宮城県内の飲食店や魚屋に卸します。セリは毎日朝昼2回、眠い目をこすりながら出かけたのですが、仲買人さん達の威勢のいい呼び声に一気に目が覚めました。
市場中に威勢のいい声が響き渡る
今日のメインは真だこ。この魚市場では夏場はミズダコ、銀鮭、冬場は真だこに秋鮭がよくあがるそう。東京ではあまりたこの頭は食べないけど、ここでは頭もおいしく食べます。
逃げ出さないように袋にいれられています。
この漁港は2011年3月の震災の被害を受けながらも、4ヶ月後には市場を再開しました。再開とはいえ当時は屋根も無く、船も10艘ほど。今は仮説の市場ですが船は100艘に増え、新しい魚市場の建設も進んでいる。順風満帆…のようにも感じるが、漁師の数は減っている。震災で船や道具、やる気を失った人達は、海からは遠い陸地に住み、漁師をやめてしまったのだそうだ。
震災の傷跡が残る、漁港近くにある防災対策庁舎
魚の取れ具合は震災前と変わらない。鮭の卵から稚魚を育てて放流していた施設が崩壊したため、鮭は減ったが、代わりに今まであまり捕れなかった穴子、真鱈などが捕れるようになったそう。特に真鱈は繁殖力が強いので、冬だけではなく夏にも捕れる。宮城県は本当に恵まれた好漁港なのだ。
ホタテや牡蛎なども豊富な宮城県は好漁港として全国でも有名
宮城県に面している海は、北から寒流、南から暖流が流れる潮目にあたる。暖流にはたくさんの魚がおり、寒流には魚のエサとなるプランクトンが多いので、潮目にはたくさんの魚が集まるのです。まったくうらやましい限りなのですが、冷蔵庫のない時代などは、こんなにたくさんの魚をどうやって保存していたんでしょうか? その答えは『かまぼこ』という食品に隠されていました。
魚の身を骨からはずし、すり鉢で摺って練り、細い竹の先につけて火で焼いたものを、昔は『かまぼこ』と言いました。その焼いた見た目がガマの穂という植物に似ているからその名前がついた、と言われています。かまぼこの起源は西暦260年頃、冷蔵庫のない時代は火を通すことで、たくさん捕れる魚の保存性を高めていたのだと考えられます。今は魚のすり身を蒸した物をかまぼこ、棒に刺して焼いたものをちくわ、揚げたものをさつま揚げと呼ぶのが一般的。
宮城県のかまぼこは昔『ベロかまぼこ』と呼ばれていました。あの有名なロックバンドのロゴに使われている様なベロの形に似ているのでそう呼ばれていたけど、笹の葉の形にも似ている事から今は『笹かまぼこ』と言われています。震災前は宮城県が日本一のかまぼこ生産量を誇っていました。
宮城県・名取市にある『ささ圭』も震災の被害を受けたかまぼこ屋。三つの工場を津波で失いながらも、残った店の一角に完成させた小さな工場で笹かまぼこ作りを再開。2012年には本社工場も完成し、機械作りと職人の手による手作りのかまぼこ、その他新商品開発などにも力をいれています。それでも震災前の生産量、売り上げには届きませんが、今日もおいしい笹かまぼこを作り続けています。
魚のすり身を丁寧にすり潰し、塩や調味料を入れて味付けをします
すり身を型に入れて成形
じっくりと焼いて完成 Photo by sasakei
こちらは少し小さめの笹かまぼこ
包装され、箱詰めにして出荷されます
牛タン入り笹かまぼことさつま揚げ Photo by misa ono
豊富な海の幸に恵まれた宮城県。震災からの復興にはまだまだ時間がかかりそうですが、これからもおいしい食文化を発信していって欲しいと願っています。
宮城県漁業協同組合 志津川支所
南三陸町地方卸売市場
〒986-0733
宮城県本吉郡南三陸町志津川字旭ヶ浦8番地
※見学には事前の連絡が必要です
株式会社 ささ圭 本社・工場
〒981-1226 宮城県名取市植松字入生48-1
TEL. 022(784)1239 FAX. 022(784)1250
http://www.sasakei.co.jp
Text&illustration by misa ono
Photo by nobutoshi kurisu
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上記は海外に日本食を紹介するサイト『Cupido』の内の
拙コラム『
Amazing! Koji mold world!』の日本語版です。
許可なく無断で転載、使用、複製する事を禁じますよ!
おのみさ(misa ono)
麹料理研究家・イラストレーター。
味噌を手作りした時に、麹が発酵しておいしくなっていく様子がおもしろくて興味を持ち、塩麹、味噌、甘酒、酒粕などを使ったレシピ本、日本の麹食品を巡る紀行本などを出版。今もイラストの仕事をしながら色々な麹料理を研究中。好きなものはお酒、音楽、文鳥、着物、麹料理。
☆『
絵でわかる麹のひみつ』
著者:小泉武夫 絵・レシピ:おのみさ
(講談社サイエンティフィク)2015/2/25発売
☆『
おのみさの麹のよさを200%引き出すアイデア帖』
(KADOKAWA/メディアファクトリー)2014/3/14発売
☆『
麴巡礼 おいしい麴と出会う9つの旅』
(集英社)2013/4/26発売
☆『
麴のおつまみ』
(池田書店)2012/5/28発売
☆
毎日がたのしくなる『塩麴のおかず』 (池田書店)2011/8/26発売
☆
からだに「いいこと」たくさん『麴のレシピ』 (池田書店)2010/11/25発売
異例の、料理本とセットになった楽曲
わたくしの歌詞に、福岡在住のミュージシャン
「コロンビア浦野」さんが曲をつけて唄ってくれてます♡
『
塩麴のおかずのうた』
(コロンビア浦野:ライブバージョン)